2019.3.7
先週、Mediassortへの週に一度の寄稿を始めてから、初の休載をいただいた。今週も、いつもより遅めの掲載となってしまった。
理由はもちろん、2月末から3月初めの多忙。多くのジャーナリストにとって、この月末は非常に忙しなかったのではないだろうか。
国内では沖縄県民投票。そして国外では表題として取り上げた米朝首脳会談。
時系列的には先の沖縄県民投票を取り上げようと思ったのだが、今回は先に米朝首脳会談について書かせていただくことにした。なぜなら、沖縄県民投票の結果に情報提供の緊急性や意外性がなかったことに対し、米朝首脳会談は驚くべきことが多かったからだ。
共同宣言に至らなかった。紙切れ一枚すらなかった。
多くのジャーナリスト(報道各局ですら)にとって、これほど意外な事はなかった。
なぜなら、第一回のシンガポール会談で、お互いの手の内は全て出したと思っていたからだ。今回のハノイではお互いが譲歩しながら妥協点を探り合う、そんな会談になると誰もが踏んでいた。
最悪、何も決まらなかったとしても、「今後も前向きに会談を継続させる事で一致した」と宣言すれば良いのだ。
しかしながら、それがなかっただけでなく、午後の会議すら開かれずに、金正恩は予定を繰り上げて帰国したのだ。
アメリカ、そして北朝鮮。両者の思惑の外で、報道各局やジャーナリストは振り回されただけだった。
残念ながら私もその一人だった。なにせ、第二回米朝首脳会談が開かれるという情報が入ったのが2月の20日。それまで情報が遮断されていたのだ。実際当日の報道陣ですら小出しの情報に慌てふためいたという。
しかしながら会談が終わり、少しずつ情報が開示されていくに従って、私も一つの大きな仮説を推察することができた。今日は皆さんにその仮説を余すところなくお伝えしたいと思う。
ちょうど前々回の記事で去年6月に行われた米朝首脳会談について取り上げたわけだが、両首脳は能力者なのではないかという私の読みは今でも正しいと思っている。その仮定が正しければ、今回はお互いの手の内を見せた上での再衝突となる。机上の議論だけではなく、最悪実際のリアルファイトにもつれ込む可能性を両者は考えるはずだ。レベルの高い能力者同士の戦いが危ないことは、ワンピースやクレイモアをみれば自ずと明らかであろう。
右脳的な能力に長けるトランプに対し、左脳的な能力を持つ金正恩。
両者の戦いは、皮肉にもかつて共産主義と資本主義が血で血を洗い争った、ベトナムのハノイで行われた。
まず、両者の顔をご覧いただきたい。
私が書く記事を常に見ている意識の高いみなさんならお気づきだろうと思うが、実はこの写真だけでも多くのことがわかる。ジャーナリストたるもの、写真にうつるヒントを見逃してはいけない。写真の中の判断材料をより明確にするために一番簡単な手段は、比較であろう。
これが前回、シンガポールで行われた第一回の米朝首脳会談の写真である。
これで分かった方も多いだろう。まず最初に、第一回目と第二回目では両者の立ち位置が違う。
シンガポールでは向かって左が金正恩だったのに対し、ハノイでは向かって左がトランプとなっている。なぜか。
簡単である。これは両者の力が均衡している証拠である。どちらが提案したのかはわからないが、「上座、下座はありません」という、政治的なアピールであろう。
勘違いしている方もいるかもしれないが、この2名はお笑い芸人ではない。
立ち位置が違っていようが、お互いに違和感はないのならそれで良いと私は思う。
理由はどうあれGDP世界一の大国アメリカと島根県レベルのGDPしかない北朝鮮が、こうもイーブンに会談できている現状は我々にとっては驚きだ。偏に核ミサイルの力だけではなく、正恩の実力ということもあるのかもしれない。
そして2つ目の写真から紐解かれるポイント。
「金正恩は今回泣き落とし作戦だった可能性」である。もう一度写真を見比べてほしい。
もう分かっていると思うが、
①金正恩は前回つけてきたメガネを今回はつけていない
②ちょっと金正恩の顔が前回に比べて腫れぼったく、むくんでいる(メガネの小顔効果の可能性あり)
③前回と全く同じ服を着ている
さらに、写真を裏付ける事実として、
④今回の米朝首脳会談の数日前に、北朝鮮は飢饉による「非常事態宣言」をWHOに通達している
この4つが全てを物語っている。
おそらく、金正恩はトランプとの会談でこういう芝居をうったはずだ。
「お金がなくてメガネの新調ができない…」と。
この一言だけで良い。これだけでトランプも気付くだろうと。だって前回と同じ服、前日も泣き続けたのか野暮ったい顔、そして非常事態宣言。これではトランプも居た堪れなくなるだろう。そう踏んだ。私からしても、その読みは間違っていないと思った。とてもいい作戦だ。
しかしここに来て、両者それぞれに悪いニュースが入った。
金正恩が自らの命で毒殺した兄、正男(まさお)の息子が、亡命政府を立ち上げ、正当な後継者であることを主張し、そしてアメリカでは、十年来トランプの顧問弁護士だったマイケルコーエン氏が、トランプは「イカサマ野郎」であると急に証言し出したのだ。
この2つの緊急事態が、ほぼ同時に起こった。
もうこうなってしまったら、両者とも会談どころではない。せっかくシナリオを書いてきた金正恩の泣き落とし作戦も意味もなくなってしまい、早々に切り上げてお終い、という展開だ。
お分りいただけただろうか。
そう、こんなタイミングよく両国の首脳に緊急事態が発生するだろうか。いや、するわけがない。
つまり、これは米朝首脳会談を陰で動かしている「フィクサー」がいるという事実を証明しているのだ。
私はフィクサーをほぼ特定している。
次回以降、その人物について話す機会があるかもしれない。
これは余談だが、「金正恩」の影武者を最近日本のテレビでもよく見かけるようになった。読者の皆さんも注意深く見て欲しい。
政治ジャーナリスト。
とことん現場を貫き、あらゆる視点から政治を読み解くことを心がけている。
イラストはMC・司会業の石渡氏から。
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