2019.1.30

木野本アキラ、政治を切る 〜レーダー照射問題で揺れる日韓関係の修復はあり得るのか〜

    日韓関係が現在センシティブな問題であることは間違いないだろう。しかし、この問題が今後の世界にどれほどの影響をもつ事案かを考えると、触れざるを得ない。

     

    「日韓の雪解け」

    1990年代後半から始まり、2002年の日韓W杯の際にはこの言葉が大きく取り上げられていた。そうそう古い記憶ではないはずだ。順調に結び直されていった日韓関係は、いつから再びほつれ出してしまったのだろうか。

     

    拗れた日韓関係を紐解く

    日韓関係を紐解くにあたり、非常に重要な資料がある。それは、韓国のアーティスト「東方神起」のMV問題が一番分かりやすい。普通の人では話題にすら上がらない問題ではあるが、日韓関係を注視している人ならば知っているはずだ。

     

    わからない人のために説明すると、2018年に発売された東方神起のニューシングルのミュージックビデオに映っている世界地図から日本列島が消され、一部の界隈から避難を浴びた問題である。この件で、東方神起の事務所は「誤って消されてしまっていた」という釈明をしている。果たして、そんなことはあり得るのだろうか。

    しかしながらたった1グループの起こした行動が原因となり、目くじらをたてて国家間の問題にするのはおかしいという革新派と、いいやこれは韓国が悪いと言い放った過激保守派が対立し、Twitterは大変賑わった。

     

    この件に関して、私はどちらの意見にも傾倒しない。ただ、事実のみ受け止めるだけである。私が問題視しているのはそんな小さい話ではない。何故、東方神起の事務所が日本列島を入れ忘れるというミスをしたのか。この疑問を紐解くとある1つの仮説が浮かぶのである。

     

    我々が普段から信用している世界地図は、果たして本当に正しいのだろうか

    この小見出しをみて、私のいわんとする事を理解できた方はジャーナリストの素質がある。

    私が先述した日本列島の入れ忘れ問題を掘り下げ、仮説を上げる際に手助けとなったワードは3つ。「神話」と「便宜」そして「地球平面説」である。これだけでは頭の上に?マークが出るだろうから、もう少し説明しよう。

     

    まず神話とは、伝説と言い換えることもできるかもしれない。ギリシア神話やマハーバーラタに代表され、日本では「古事記」もしくは「日本書紀」が神話の要素を帯びている。今回の問題において重要なことは、「これらの神話は全てが空想ではない」ということである。

    例えば顕著な例として、「洪水神話」があげられる。旧約聖書に語られている「ノアの方舟」が一番有名な洪水伝説だろう。今回上げる「洪水神話」とは、単にそういった洪水の神話という意味合いではない。詳しくは自身で調べて欲しいが、要約すれば「世界各所で洪水の神話が存在する」ということだ。しかも、洪水が語られている時期もほぼ同じくしてである。日本も例外ではない。「海幸彦と山幸彦」にて、大島が沈むほどの大波があったことが語られている。

    これは過去に「地球上で同時期に実際に洪水があった」という歴史的事実を意味する可能性があるのである。逆に言えば、「神話や創作を『事実』と見なしてしまうことがある」。これが1つのキーワードである。

     

    2つめは「便宜」である。「便宜上」という言葉の意味はわかるだろうか。意味としては「(厳密に言えば違う可能性もあるが)こちらの方が都合が良いためにそのように定義づける」といったところか。

    現代社会において便宜は数多の場面で使用されている。例えば物理。ものの重さを表す「グラム」という単位も、便宜上のものに過ぎない。地球上での1立方センチメートルの水の重さを便宜上1グラムと言い換えているだけであり、質量そのものではない。もし地球に隕石が衝突し、地球が半分に砕けた場合、1グラムはもっと軽くなってしまう。「グラム」は相対的な数値を元に作られた「便宜的尺度」でしかない。

    「並列した直線は交わらない」というのも同様に便宜上使われている定義である。空間に捩れが生じる宇宙では、平行直線が交わることもある。

     

    3つめのキーワードは「地球平面説」。さて、地球が球体であることが証明されたのはいつだろう。16世紀にマゼランが地球周回で証明したが、説としては今から2500年以上も遡る、古代ギリシアで既にプラトンがそのような仮説を提示していた。

    もちろん、地球は球体である。地球が平面であることはあり得ない。ちゃんちゃらおかしい話である。

    しかし不思議なことに、現代のアメリカ人の1/3が地球が球体であることに懐疑的だという調査結果がある。もしかしたら、地球は平面なんじゃないかと思っている人間も少なくないそうである。地球平面説とは、現代において突拍子も論証もなく出てきた、病的な仮説なのだ。

     

    この3つのキーワードから、私が導き出したのは以下の仮説である。

     

    「日本列島浮島説」が、韓国の中でまことしやかに囁かれている

    読者のみなさんが驚くのも無理はない。しかし、この可能性は大いにあるとみて間違いはなさそうだ。この仮説で説明すれば、今日韓関係がこじれている理由も全て合点がいくのである。

     

    韓国とはまだ若い国だ。ムン大統領は国の成り立ちを100年前の亡命政府誕生時にしようとしているという推察もあるが、世界の認識では第二次世界大戦後である。まだ国が成立してから70年弱、たとえ100年だとしても歴史的にとても浅く、まだ若い。つまり逆にいうと、神話などによるバックボーンが存在しないため、国家としてのアイデンティティがまだ統一されていないように映る。

    そんな韓国人が隣国である日本の神話に興味を抱くのは必然だろう。そして日本の神話を勉強した際に、ある現象から誤解が生まれる。

    みなさんもよくあると思うが、「神話と昔話がごっちゃになってしまう現象」である。というより、昔話とは少なからず神話の影響を受けているものが多く(日本では鶴の恩返しや桃太郎あたりも日本書紀の影響を受けている)、もともとが取り違いやすいものであるのだ。

    韓国人は誤って日本の「浮島伝説」を神話の一種だと思ってしまった。千葉県鋸南町の浮島の話か、ひょっこりひょうたん島が私の中で有力だ。ドラゴンクエスト6でも浮島の話が存在する。そして、先述した1つめのキーワードに付随される現象、「神話や創作を『事実』と見なしてしまうことがある」ことから、「日本列島って、ひょっとして浮島なんじゃないか?」といった仮説が生まれてしまったのである。

     

    この仮説は都市伝説や陰謀論が好きな若者の手によりあっという間に広がる。やがて、日本は太平洋を自由に移動する浮島であるという文化が若者の間で定着してしまったのだ。そして10年後か20年後、その若者が大人になった時には、「日本列島浮島説」は韓国国民のコンセンサスとなった。

    「そんなバカなことがあるか」と思う読者の方もいるだろう。無論、日本は浮島でもなんでもない。しかし、「アメリカ人の1/3が地球が球体であることに疑問を抱いている」というありえそうもない事実、現代の病理をあなたも知ってしまっているではないか。

     

    そうなってくると難しいのは地理学である。日本列島という自由に移動する浮島を、紙媒体ではどのように処理したら良いのか。韓国民は頭を抱えたことだろう。

    しかしその中でも機転を効かせたある国民の発案により、韓国では2つの地図を用意することにした。

    「いつでも日本の位置を変更できるように日本列島を除き、日本列島のみアタッチメントにした世界地図」と「便宜上、いつもの場所に日本が描かれた地図」である。

     

    前者は実際に日本の位置をしっかりと把握したい気象学者やアーミーなどの実地系の方が、後者は地理的詳細を必要としない統計学者や学生などが使用した。もうお分かりいただけただろう。今回の「東方神起」のMVは、気象学者が所持している世界地図を利用し、制作会社が作ったと仮定すれば、「日本列島のみが意図せず消えてしまった」という可能性の証明となるのである。

     

    日韓関係の今後

    もちろん、「東方神起MV問題」は日韓関係を冷え込ませた100ある理由のうちのたった1つである。

    慰安婦問題、徴用工問題、旭日旗問題をはじめとする第二次世界大戦に起因するものから、レーダー照射問題、スポーツ選手の猿真似問題など、現代に起因するものまで、まだまだ日韓関係を冷え込ませる問題は山積みである。

    しかし万が一、いや、億が一これらすべての問題が、「東方神起MV問題」の私の仮説のように「お互いの誤解や偶然」に起因するものだとしたら、両国が啀み合うこと自体とても悲しい話ではないだろうか。

     

    これからも私は客観的に、日韓関係を見つめていきたいと思っている。

    木野本アキラ
    木野本アキラ

    政治ジャーナリスト。
    とことん現場を貫き、あらゆる視点から政治を読み解くことを心がけている。
    イラストはMC・司会業の石渡氏から。