なかなかディープなゲイバーに行ってきた話【エモーション/上野】
2019.5.5
ちょっと前の話です
かれこれ一ヶ月以上経ってしまったのですが、なかなか味わったことのない貴重な経験があったので、記事にしたいと思います。レポするつもりはまるでなかったため写真等はありませんが、活字の力を信じてみます。
そう、あれは、上野で即興芝居家の清野さんが主催しくれたお花見をした後で予定調和のごとく終電を逃してしまった時の話になります。
時刻は25時を少し回った頃。閉店ですとお店を追い出され、行くあてもなく消極的支持でカラオケボックスへと足を運ぼうとしていた頃、一緒に飲んでいたみきさん(仮名)から「行きつけのゲイバーがあるから行ってみませんか?」との提案があったのです。ゲイバー、という異世界感への興味に加え、「平均年齢30の4人組(みきさん、退屈先生、小林、僕)」という絶妙に半端な状態であるということもあり、僕らはその提案を飲むことになりました。
僕のゲイバーのイメージはテンション高めのマスターが派手な扇子を仰ぎながら巧みな話術で場を回しまくるというものだったのですが、ところがどっこい、話を聞いてみるに今回行くところはどうもそんな感じではない模様。
要約するとこんな感じ。
「前述した僕のイメージは観光地となっている新宿二丁目のバーのノリであって、全てのゲイバーがそういう感じではない」
「今回行くところはカラオケバーだけど、本来一見さんはあまり行かないような奥まった場所である」
「本来は24時閉店だが、電話してみたところたまたま常連さんたちを呼んで内輪で営業しているから、きても大丈夫とのこと」
「一見さんお断りの店である。良識を持った行動を」
あれ、なんだか足が重くなってきたぞ、、、。すでに我々は花見→二次会→三次会と来てかなり出来上がってしまっている・・・。もうルールがあるだけで耐えられない気がするわけです。
しかしながらみきさんによってすでに場は抑えられている手前、今更やめましょうとは言えません。多少の蟠りはあれど、このままだとゲイバーを楽しむことができないと気持ちを切り替え、勇み足でそのバーへと向かいました。
エモーション
ツイッターの自己紹介文には、こう書かれています。
今更ながら、本当に一見さんお断りだったんだ・・・。
と、いうことで、向かった先は上野駅から徒歩3分ほどにある、とあるビルの奥まった部屋。入るなり、カラオケの機械音と懐かしいメロディが鳴り響きわたりました。僕らの他に1組。男性3名、女性1名の4人組。僕らと同じ形態だけど、ゲイバーの手前、ジェンダーはわからず。
みきさんから聞いていたように、かなりママとは仲の良い感じ。間違いなく常連さん。よろしくやっている中を、そろりと入る僕ら。完全に異物感がありました。
いざ四次会を
席に着くと早速ママがお酒を作ってくれました。軽く自己紹介をして、水割りで乾杯する僕ら。カラオケから流れてくる曲は浜崎あゆみ。なるほど、浜崎あゆみは歌われるのか。
みきさんのいうように、破天荒で華やかな蝶のようなゲイバーのイメージとは全く違い、落ち着いた大人のカラオケスナックに近い感じ。しかも、常連さんもママも、必要な会話と軽い世間話以外に、お互いを意識もせずにただグループ内で楽しんでいるのです。
ゲイバーはパーティーピーポーだらけだと思っていた自分の予想はこの時点で大きく外れました。
しばらく雑談をしながら、周りを観察し、ちんまりお酒を飲む。30分は様子を見よう。借りて来た猫のように静かになった僕とは対照的に、小林と退屈先生はグイグイとママと話す。すごい。
僕は多分考え過ぎる癖があるのだと思います。LGBTが世間的に認知されて来たこの時代に、一見さんお断りのお店と、大人なスナック感。その世界になんら理解のない僕からしたら、何がタブーで何がオッケーなのかまるでわからない。
例えば職業。
「なんのお仕事をされているんですか?」
この言葉がタブーの可能性すらある。夜の店では昼間のことはタブーだと、昔のドキュメンタリーでやってた気がする。
この考えはゲイバーだから、という訳でもないんです。例えば二郎。店によって独自のルールがある場所においては、とりあえず様子見。列に並んでいる時から前の人の行動を逐一チェックし、何が法度なのかを想像で補完する。今回もその作戦で攻めようと思っていた訳です。
カラオケマイクはまだまだ常連さんが握っている。流れてくる曲は、90年代のアニソンへと変わっていました。
これだ・・・!
まずは常連さんと心を通わす。そりゃ僕らに対して異物感があるのは仕方ない。全くの事実。でも、「異物」ではあれど「無害」であることを証明したい。そのためには、歌だ。何よりアニソンなら歌える!!
そう思っている中、ナイスタイミングでみきさんがカラオケのリモコンを回して来てくれました。小林と退屈先生も同じ気持ちであってくれ、と二人にリモコンを託す。
さっそく小林が「この空気、ぶち壊そうぜ」とマキシマムザホルモンをチョイス。だめだこの人、もう出来上がってる。「考え直してください」と説得した後で再びチョイスしたのは、クリスタルキング「愛をとりもどせ」。
小林は酔うと絶対にこれを歌うのです。これを歌うということは完全に出来上がっている証拠ですがそれはおいておいて、このチョイスは比較的に良いのではないか・・・?
オッケーとGOサインを出し、小林にマイクと希望を手渡しました。
熱唱。アツきサウンドに魂揺さぶられ、聞いてるこっちもテンションが上がる100点満点の出来。これは期待ができる・・・!!ママも両手を叩いて拍手をしてくれています。よし、これはいけるのではないか・・・? とにやりとした直後、ママが一言。
「ノンケのノリだわぁ・・・」
なん・・・だと・・・? 郷に入り、郷に従っていたつもりが、ここに来て一気に突き放された感じがしました。やはりここでも出てくるのか、ゲイとノンケの確執。
続いて退屈先生がママに「このアニソン歌ってください!」とリクエスト。なるほど、これは盛り上がる歌だし、アニソンだし。そんな中、ママは「オッケー」と一つ返事で、すごいかっこよく歌い上げました。ワーとか、キャーとか、イエーとか一切なく。
意外でした。もっと盛り上がるかと思いきや、どう立ち振る舞ったら良いのかわからなくなってしまった僕は、何も考えずにハイロウズの「日曜日よりの使者」を歌いました。その日2度目の「ノンケだわ・・・」が入りました。
いや、そりゃノンケなんだけど、ノンケ認定されることがなぜこれほどまで口惜しいのか、不思議です。
せっかく来たんだから、この空間をいっちょまえに共有したいという気持ちは強まるばかり。大丈夫。今では二郎でもヤサイカラメとかさらっと言えるようになったじゃないか。僕はもう一度常連さんを観察してみました。
すると、あるルールがあることに気づいたのです。常連さんたちは、フレーズごとにマイクを隣に渡しています。もしやこれがこのバーでのルールなのでは・・・?
そう思ったと時を同じくして、みきさんを経由して常連さんが僕へマイクをパスしてくれたのです。「この曲歌えますか?」と。 流れて来たのは幽☆遊☆白書opの「微笑みの爆弾」。歌える・・・!
見様見真似で1フレーズ歌い、すかさず隣へパス。小林まで行き、そのままママへ。ママから常連さんへ。バトンが繋がった・・・!!
実際どうなのかは分かりませんが、この瞬間「許された感」は異常でした。なんか知らないけど。
そしてそれが契機となったのかは分かりませんが、少しずつ常連さんとの雪解けが始まり、ちょっとずつですが会話ができるようになりました。男性2人がカップルで、あとの2人はノンケだという話まで教えてもらったりと、楽しい時間を過ごしました。
結局3時にお店は閉店。常連さんが帰り、ママに感謝を伝え、僕らは五次会へと向かったのです。
反省会
その後、みきさんから聞いた話。
「ゲイバーでは『オカマ』というワードはNG。他にもあんまり使って欲しくない言葉も結構ある」
「1フレーズずつ歌うのもバーでのルール」
なるほど、やはり僕らの知らないところで、そういうルールがあったということか。(先に言ってくれ)
また、なんでみきさんはゲイバーの常連なのか聞いてみたところ、「店で飲みたいのに、そういうところでは男女の関係がどうしてもちらつく。普通のバーでもナンパされたりして嫌だった。そんなことを関係なしに、一人で自由にお酒を飲みたいと思い、行き着いた先がゲイバーだった」とのこと。
なるほど、そういうルートでゲイバーに入り浸る人もいるのかと、少しびっくり。
ということで、今回の経験でゲイバーにもいろんな種類があり、それを構成する人にも、そしてルールにも、さまざまな種類があることがわかりました。何事も一概にせず、まずは経験だと改めて思った次第です。
3時まで開けてくれたり、記事作成を快諾してくれたママ、それから常連の皆さん、本当にありがとうございました!
ちなみにアイキャッチはフレディ感のあるのをチョイスしました。
大手広告代理店から独立し、不動産事業や投資等で
莫大な資産を得る人生を日々夢見ながら家でゴロゴロしている。
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