アニメーションをより安価に発注したい事業者に知っていて欲しいこと

    2019.7.20

    「アニメって実際簡単に作れるんでしょ?」

    昨今、アニメーション制作のソフトが普及して、一般人でも比較的簡単にできるようになってきたことと、いわゆるジャパニメーションが世界規模で認知されてきたこともあり、アニメを使ったプロモーションを考えている事業・団体が増えてきています。

    それに伴い、Mediassortでも見積もり相談のご依頼をいただけることが増えてきました。

     

     

    こちらのようなアニメーションを「セルアニメ」、Mediassortでは「キーフレーム」と分けるため「フレームアニメーション」「ジャパニメーション」とかの言葉をつかったりしています。

    そう、こういうアニメーションの依頼をうっかりいただくことが増えてきています。

     

    そんな中、クライアントの方には安価でもクオリティの高い作品を作ってお送りしたいという思いや、提携しているクリエイターの方には適正な金額で仕事をお願いしたいという思いもあるため、できる限り人件費を削ったり、一部ではディレクション費用を削って見積もりを出しています。

    Mediassortはまだ小さい制作事業ですが、アニメーションの制作事業では上記の努力やクリエイターの方の協力もあり、相場よりかなり安い金額で受注しています。

    具体的な金額等は、こちらの記事から確認していただければと思います。

     

    そんな中、先日こちらが出した見積もりに対して、「うわぁ・・・」といわれた企業があったんですね。

    おおよそ5分、複数人の声当てもあるので、制作に携わる人数が約10人ほど、その上そこそこ詰まったフレームアニメーションなのですが、それに対してこちらの見積もりが「これ高すぎでしょ」と思ったんだと思います。

    おそらく僕ら制作側の金額感と、アニメを作ってほしいと考えている人の金額感の格差がめちゃくちゃひらいてしまったのではないかな、と少し残念に思ったのです。

    ということで今回は、ソフトが充実して一般の方でもアニメーションが制作できるようになった今でも、なぜアニメーションは高額なのかということを説明しますので、少し耳を傾けていただければなと思います。

     

    そもそも、絵を描くことには時間がかかる

    先ほどソフトが安くなり、アニメーションの制作が比較的簡単になったと書きましたが、これはあくまでも制作機材と手順が簡略化されただけです。結局絵を描くのは人間であり、「コンテ」「背景」「下書き」「線」「色ぬり」「影」「ハイライト」はパソコンを使ってはいますが、全て手作業で行います。

    そしてフレームアニメーションの場合に工数がかかるのが、「中割り」です。これは、原画と原画をつなげる間の作業であり、アニメーションを作る上で非常に大事・かつ実力が必要となる仕事です。

    アニメ制作会社で、中割りを専門としている方は「動画マン」と呼ばれますが、フリーランスの動画マンはほぼいません。この中割りという作業をしている風景を想像していただければわかると思うのですが、1枚1枚手描きで補完していく必要があり、非常に工数がかかるんです。

    今のアニメーションの場合、割とぬるぬると動かしたいのであれば最低でも9コマ/毎秒、通常は12-15コマ/毎秒が必要となってきます。

    原画がたとえ1秒おきにあったとしても、残りの8-14コマを中割りで補完するのです。それら全てが手描きです。

    右から左に歩いていく人の中割りは比較的簡単ですが、振り向くなどの動作の場合は、デッサン割りといって難しい作業になります。

    最近「自動中割り」などの機能があるソフトが発売されていますが、こちらはフレームレートをより細かくした際の補填ソフトのような位置付けです。12コマ/毎秒のような場合はあまり使い道がなく、デッサン割りの場合は全く意味がありません。

     

    と、長々と興味のあることないことお伝えしてしまいましたが、要するにアニメーションを作るにはめちゃくちゃ時間がかかる、ということです。

     

    アニメーション以外にも、アニメにはいろんな要素が必要

    これも忘れてはいけないことだと思います。

    こちらはリカイゼンさんが公開している、30分アニメ1話分の制作費の内訳になります。

    原画:120万円

    背景:130万円

    動画:90万円

    絵コンテ:25万円

    仕上げ:120万円

    制作進行:100万円

    撮影:100万円

    演出:50万円

    材料:50万円

    設定:30万円

    プリント:50万円

    編集25万円

    音響制作:150万円

    脚本:20万円

    監督:20万円

    合計金額:1100万円

    アニメーションを制作するには、これくらいの作業分担が必要になるということです。

    しかしながら、企業からの受注で多い1-2分、多くて5分のアニメーションにここまで人件費をかけることは、よほど大きな企業でなければほぼできませんよね。

    そのような企業案件を受注している企業は、「ディレクション(監督)」「絵コンテ(脚本)」「イラストレーター(原画)」「アニメーター(動画)」「編集(編集)」「音響(声優)」と、6つの分野に分けてそれぞれ予算を見積もります。実際それぞれに何人のクリエイターが関わるかは会社によって変わってくると思います。

    見落としがちなのは、「声優」にかかる費用です。かなりリスクはありますが、クラウドソーシングなどを通じて無名のフリーランスの方を利用すれば大幅にやすくなります。しかし、やはりクオリティの高いアニメーションを制作するとなると、実績のある声優に依頼する方が良いでしょう。

    BGMや効果音に関しては今はフリー素材のものが多くありますので、そちらを使うため費用がかからない会社も多いようですが、アニメ制作は「アニメーション」以外にも必要な金額が多いのです。

     

    アニメーターの薄給

    よく言われている話ですが、アニメーターはめちゃくちゃ給料が安いです。これは1枚あたりの値段が昔から据え置きであるのに、求められるクオリティがどんどん高くなって行ってしまったためという背景があるようです。

    これは、今でもあまり処遇は変わっていません。

    依頼者が「高いよ」と思っている金額だとしても、作業量に対して受け取る金額が見合わず、仕事をやめるアニメーターも数多くいるのが現状です。。。

     

    ということで

    だいぶ熱く語ってしまいましたが、アニメーション制作にあたっての金額感について少しでも見直していただければ幸いです。

    どんなに小さい会社/個人事業主だとしてもそれを生業としているのであれば、作業量が多い分フレームアニメーションの制作にはお金がかかるのが普通なんです・・・。

    予算が明らかに足りない場合は、「キーフレームアニメーション 」や「パラパラ漫画風アニメーション」など、比較的安価なアニメーションもあります!

    そちらの方もちょっと考えてみるのはいかがでしょうか?

     

    この記事を書いたライター
    咳戸

    大手広告代理店から独立し、不動産事業や投資等で
    莫大な資産を得る人生を日々夢見ながら家でゴロゴロしている。
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